ジョエルの喫煙ライブラリを終了します
なんという救いだ、ガンに罹ったらしい!
「昨晩胸が焼きつくような感じがした。遂に肺がんに罹ったと思った。私は恐ろしいとか、驚くとか、また動転することも無かった。私は実際に幸せを感じた。回復の見込みの無い病と診断されるのを待ち焦がれていたとは思い出せないのだが。」 この普通で無い発言は禁煙クリニック参加四日目の女性から言われた。これは精神病患者や極端に落ち込んだ人のたわごとに聞こえるが、彼女は決してそういう人では無い。それどころか彼女はこのせりふを言った時、微笑んだり笑ったりしていた。
この発言の中に彼女はどんなユーモアを込めたのだろう? 前の晩にこのせりふを独り言のように言った時、彼女は自分が経験している胸の痛みがその日早い時間に他のクリニック参加者三名が自分達の症状を描写したのと同じものだと気づいた。それは禁煙から立ち直る正常な過程の一部なのだ。彼女は自分が消耗性疾患や早死にを待ち望んでいたわけではないことも知っていた。彼女が待ち望んでいたのはタバコを吸うことなのだ。胸の痛みが起きた時彼女は既に肺ガンなのならタバコを吸ったほうがましだと合理的な説明をしたのだ。そして彼女はガンを待ち望んでいたことに気がついた。その時点で彼女は自分の思考方式がなんと病的なのか思い知った。禁煙しているからではなく、中毒だから、彼女はこのような堕落した考え方に至ったのである。この状況の馬鹿らしさに気がつき、彼女は喫煙願望を一笑に付し床に就いた。
あなた方自身も自分が喫煙者だった時にどんな非合理な考え方をしたか覚えておくことはとても大切です。喫煙者としてあなたはメディア、医者、家族、卒煙した友人、とりわけ重要なのはあなた自身の体から常に警告を受けていました。健康を損ない、命を失うという、しつこいメッセージを一週間たりとも浴びなかったことは無いでしょう。しかしあなたは従順な中毒者だったので、自分の本当の支配者…タバコ…に従うため外部からのうるさい影響は無視しました。私の最初のクリニックに参加したビックがかつて言いました、 「私が顔を向けるとどこでもタバコの警告が眼に入った。新聞の記事、雑誌の記事が絶え間なくタバコは致死性だということを補強する。タバコを宣伝する広告塔までが公衆衛生局長の警告を載せている。私がタバコの箱に手を伸ばすたびにタバコの箱の警告文が私を睨みつけた。論理的な結論にたどり着くのは時間の問題だった。警告文を読むのをやめることだ!」
あなたが中毒だった時タバコの支配は完璧なものだったのです。あなたが言うこと、やることは、外部の観察者から見れば意志薄弱で、馬鹿げているか気違いじみているのです。同時にタバコはあなたからお金と健康を奪い、最後には命を奪うのです。一度タバコから自由になれば過ぎ去った中毒に伴うこれらの異常さが認識できるのです。このような惨めな人生を決して歩まないために…決してその一服を吸わないで。
翻訳:西田季彦